年下属性はありません!
塾に戻ると,正行がすぐに気づいた。

「あれ,松井さんは?」

「あぁ,一人でコンビニ行くって」

「何かあった?」

正行には隠しても無駄だと思ったので,すべて話した。

「だったら,松井さん今日はもう塾には帰ってこないかもね。荷物まとめて行ったから,おかしいなとは思ったんだ」

確かに松井が座っていた席には荷物はもうなかった。

正行,鋭すぎだろ。

「お前,まさか松井のこと気づいてた?」

「松井さんの何?和也のこと好きだってこと?」

「お,おぅそんなとこ」

「そんなの俺じゃなくてもみんな気づいてるでしょ」

正行が笑って言った。

いやいや,それはないだろ。俺だって今の今まで全く気づかなかったんだから。

「気づいてないのは和也くらいだよ」

それだけ言って正行はまた勉強を始めた。

まじかよ。みんな気づいてるのか?俺って鈍い?

「智,智」

俺は智に小声で話しかけた。

「この塾に俺のこと好きな奴がいるっていったら,お前誰だと思う?」

智に確認する。

「え,どういう意味?和也のことが好きな人?」

「そうそう」

うーん,と智はしばらく考え込んでいた。

智はバスケ部でも有名な天然だ。

こいつにまで気づかれてたら,俺はこいつ以下ということになる。

頼む,分からないと言ってくれ!

「あ!」

智が思いついた!というように声を上げる。

「正行でしょ!」

良かった,俺はこいつよりはましだ。
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