人間発注書
村山に人を見る目があれば簡単にバレてしまうだろう。


不安はどんどん大きくなっていき、足はどんどん重たくなっていく。


「ついたぞ」


そう言って新人が屋敷の前で足を止めた。


いつも丘の下から見上げたことしかなかった屋敷が、今目の前にある。


俺の家の3倍の大きさはありそうなそれに思わず口がポカンを空いてしまう。


俺は慌てて自分の顔を引き締めた。


ここまで来て引き返すわけにはいかない。


覚悟を決めるんだ。


自分自身にそう言い聞かせ、大きな門の右上についているインターフォンを見る。


普通のインターフォンじゃなく、銀色の竜の絵が掘られたボタンだ。


こんな所まで高級感があふれ出している。


そっと指を近づけて言った時、新人が俺の横からインターフォンを押してしまった。


「あっ」


「もたもたしてたら怪しまれるぞ」


そう言う新人の視線の先にはカメラが付けられていた。
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