人間発注書
俺は慌てて姿勢を正し、そして愛想笑いを浮かべた。


『どなたですか?』


インターフォン越しに聞こえて来たのは女性の声だった。


若くて可愛らしい声に少しだけ安堵する。


「○×ストアの者です。店長代理として村山さんに新商品をご案内しに来ました」


新人はここへ来るまでに考えていたセリフを淀みなく言った。


それだけでも感心してしまう。


俺はただ硬直して門の前に棒立ちになっているだけだった。


『少しお待ちください


可愛い声がそう言った後、門が自動で左右に開き始めた。


そんなことにもいちいち驚いてしまう自分が情けない。


今から瑠菜の天敵かもしれない村山に合うと言うのに、合う前から完全に相手のペ

ースにはまってしまっている。


『どうぞ、お入りください』


その声に促されるようにして、俺たちは門をくぐったのだった。
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