人間発注書
「でも、なんだって夏休み前にそんな話になるんだよ」


俺は必死になって考えてそう言った。


今の時期に転校してきても、数週間すれば夏休みだ。


クラスに馴染めないまま長期休みに入ってしまう。


「それ、俺もちょっと疑問だったんだよなぁ。夏休み中に夜逃げでもするんじゃないかって思ったんだけど」


「縁起でもない事言うなよ!」


伸紀の人の気を知らない言葉に、また声が大きくなってしまう。


「なんだよ秋夜。さっきから転校生の話に夢中だなぁ」


伸紀はのほほんと言い、弁当を平らげてしまった。


一方俺の弁当はほとんど手付かずのままだった。


伸紀の言っていることが本当だったらどうしようという不安で、食欲はどこかへ消えてしまった。


「娘が転校して来るってことは、本当みたいなんだな?」


俺は自分の気持ちを落ち着かせるために、まずは情報を整理することにした。


瑠菜がこの高校へ転校して来る。


それはきっと、サイトの経営不振が影響してのことだろう。
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