人間発注書
自分の金額は瑠菜の半分ほどということだ。


いや、Trustの一人娘であの容姿なら、更に金額は跳ね上がる事だろう。


「君自身に借金なんかはないんだろう? どうして『人間発注書』に連絡をした?」


ある程度のことは見通した様子で西崎さんは言った。


誤魔化す事はできないようだ。


俺はスッと息を吸い込んで、本当の事を話し始めた。


「実は、『人間発注書』に売られるかもしれない女の子がいるんです」


「ほぅ。君はその子を守りたいと思ったんだろう?」


図星を突かれて、自分の頬が少しだけ熱くなるのを感じた。


馬鹿にされるだろうかと思ったが、そうはならなかった。


「その気持ちはよくわかる。だけど相手はまだ売られていないんだろう? それなら、すぐに行動する必要はなかったんじゃないか?」


西崎の声は優しいが、少し怒っているように感じられた。


ここまで来たことを無駄足だったと思われているのかもしれない。
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