人間発注書
俺は黙って頷いた。


「安心しろ、彼女はまだ売られていない」


「本当ですか!?」


最近連絡も取れていない瑠菜の事をずっと心配していたので、その言葉に安堵する。


しかし、西崎さんは表情を緩めなかった。


「ただ、時間の問題ではあると思うぞ」


その言葉にサッと血の気が引いていくのを感じた。


「彼女は、売られるんですか?」


そう質問する自分の声が情けないくらいに震えてしまった。


こんなんじゃ瑠菜を守れない。


そう思うのに、どうしても恐怖心が湧いて来てしまう。


「今年の夏頃かもしれないと言われている」


「今年の夏……」


俺は西崎さんの言葉をおうむ返しした。
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