人間発注書
瑠菜は夏休み前に俺の高校へ転校してきて、そしてそのまま夜逃げするんじゃないかと噂されていた。


でも、違う。


夏休み中に売られるのだ。


転校したばかりで友達の少ない瑠菜は、夏休み中にいなくなっても学校の中で違和感として残りにくい。


それをすべて計算した上での、転校。


そう考えると途端に吐き気を覚えて手で口を覆った。


「だけど、1つだけ安心していいことがある」


西崎さんの言葉にも、俺はもうなにも返事ができなかった。


ただただ胸の奥が苦しい。


「あの娘をただの奴隷として購入する奴はまずいない」


「……どういう意味ですか?」


人身売買をするということは、相手の奴隷になるということだ。


ネットで見つけたマリモのような存在はごく稀なはずだ。
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