人間発注書
「君も、彼女の容姿を知っているんだろう? あの子はそれだけじゃない、数々の賞を受賞している」


「賞……?」


それは初耳だった。


少し吐き気が治まって来た俺は一口水を飲んだ。


「知らないのか? 彼女は弓道や柔道、書道など様々な分野で幅広く活躍しているんだ」


それを聞いた瞬間、俺は「あぁ……」と、情けない声を漏らしてしまった。


元々生きている世界が違う子だと思っていた。


けれど、それほど才能にあふれている子だとは思ってもいなかった。


瑠菜の事を知れば知るほど、自分なんてなんの価値もない人間だと思えてきてしまう。


だからだろうか、西崎さんもずっと俺の価値について話そうとはしなかった。


「彼女の才能を更に開花させれば、持ち主のステータスにもなる。彼女が自分の人生を見失うような扱いはきっとしないはずだ」


「それは……売られた方が彼女の為だってことですか?」


「そこまでは言わない。けれど、このまま家にいても彼女の才能は開花しないまま終わるだろう。習い事をさせている場合でもないしな」
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