人間発注書
それは西崎さんの言う通りだろう。


瑠菜の家は逼迫して来ている。


「もし、売られてひどい目に合ったとしたら……?」


そう質問する俺の脳裏には村山の姿が思い出されていた。


村山は瑠菜を狙っている。


金があるから瑠菜の好きなことをさせてやることもできるかもしれない。


けれど、それだけじゃ済まされないはずだ。


せっかく購入した女を野放しにしておくなんて考えられない。


「それは彼女を成長させる要因になるかもしれないだろ」


西崎さんはあくまでも前向きな考え方を述べた。


そりゃそうだろう。


彼女を売買することは『人間発注書』にとっても利益になるはずだ。


「俺はそうは思わない」


「どう考えるかは、人それぞれだ。君にとっては彼女が売られることで彼女自身が不幸になるという考え方なんだろう。それなら俺はそれを否定しない」


そう言う西崎さんはどこか俺を見下しているようにも感じられた。
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