人間発注書
不審者として追い返されることはなさそうだ。


「あの、実は新人が突然バイトをやめたって聞いて、心配してきたんです。アパートにもいなかったし」


そう言うと、彼女は眉間にシワを寄せた。


「あたしも、新人のとこは気になってたのよ。ここ最近大学にも顔を出してなくて、アパートに行ってももう引き払ってるっていうしさぁ」


「大学にも来ていないんですか?」


驚いてそう聞いた。


住む場所やアルバイトを変える事はあっても、通っている大学に来ないということは考えにくい。


「そうなのよ。連絡もつかないし、みんな心配してる」


「……そうなんですか……」


新人の友達もみんな新人と連絡が取れない状態にあるようだ。


「引き止めてしまってすみません。ありがとうございました」


俺は彼女に頭を上げると急いで大学を後にしたのだった。
< 165 / 304 >

この作品をシェア

pagetop