人間発注書
最後の夜
どうして村山が俺にすんなりと施設の場所を教えてくれたのかわからない。


けれど、村山が俺の顔から視線をそらした時「いい教え子だ」と、呟いたのが聞こえてきた気がした。


あれは一体どういう意味だったんだろう?


気になったが、今はミホコの事で一杯だ。


伸紀とは早い段階で施設へ行くことを決めていた。


それに必要な荷物や道具を買いそろえるため、俺は今日全財産を銀行から降ろしてきていた。


子供のころからのお年玉貯金と、バイト代。


合わせて30万円ほどになる。


家に戻った俺は中学の修学旅行の時に使ったリュックを引っ張り出した。


その中に自分の着替えやタオル、念のためにナイフを忍ばせる。


金は落とさないよう、リュックの中と財布の中と靴の中の3カ所に10万ずつ分けて入れておくことにした。


施設を見つける事ができても、簡単にミホコを連れて逃げて来ることができるなんて思っていなかった。
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