人間発注書
☆☆☆

翌朝はよく晴れていた。


雲一つない日本晴れ。


今日は35度まで気温が上がると天気予報で伝えていた。


俺はいつも通り制服に身を包み、大きなリュックを背負って近くの公園で伸紀と合流した。


伸紀の荷物も多かった。


これからどのくらい戻って来られなくなるのかわからないから、必要なものをとにかく詰め込んできたようだ。


制服姿のままの俺たちは公衆トイレに入り、手早く着替えをした。


制服は邪魔になるから紙袋にまとめて、家の裏庭にこっそりと置いておいた。


いつか両親のどちらかが気が付いて慌てるだろう。


それを思い、俺と伸紀はメモ帳に走り書きをしておいた。


《ごめん。すぐ戻るから》と。


不覚にもそのメモを書いている時に泣きそうになってしまった。


まだ何も始まっていないのに泣いている場合かと自分自身を叱咤し、グイッと涙をぬぐった。


そして俺と伸紀は電車へ乗り、聞いたこともない見知らぬ村へと向かったのだった。
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