人間発注書
それなのに、俺たちは誰にも見つからずに施設内に入ることができたのだ。


中に入ってからも誰にも見つかっていない。


それがおかしいと伸紀は言っているのだ。


俺は自分の背中に汗が流れて行くのを感じた。


「まさか、みんな俺たちの存在に気が付いてて捕まえるタイミングを見計らってるって言いたいのか?」


「その可能性はあると思う。施設に入ってからも何の物音も聞こえないなんておかしくないか?」


施設にいる人間全員が息を殺して俺たちの行動を見ているような気がしてきた。


俺は額にうかんだ汗を手の甲で拭った。


「施設に入っているのはみんな売られた人間たちだ。俺たちを攻撃してくる心配はない」


俺は自分に言い聞かせるようにそう言った。
< 203 / 304 >

この作品をシェア

pagetop