人間発注書
「そうかな? みんな購入者の為の訓練を受けてるんだろ? 村山の家にいた女の子たちを見て俺怖くなったもん。

あの子たち、村山に何をされても何も言わないんだぞ?」


伸紀の言葉に俺はキツク目を閉じた。


瞼の裏に映し出される村山の家にいた女性たち。


みんな、まるで自分から望んで村山のそばにいるような雰囲気があった。


この施設ではそうなるように訓練をしているのだ。


「ここにいる全員があんな風になるんだぞ? 部外者の俺たちを攻撃したっておかしくない」


この施設に入っている人間は全員何らかの洗脳を受け、あんな風になるんだろうか。


俺はそっと目を開けた。


キツク目を閉じていたせいで目の前がチカチカと光って見えた。


俺は大きく息を吸い込んでポケットの中のナイフの感覚を確かめた。


伸紀の言う通りかもしれない。


こんなにスムーズにここまで来られたことは確かにおかしいことだ。


警戒しておいて間違いはないだろう。
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