人間発注書
ミホコは身を固くしていたが、すぐに力をぬいて「なんで?」と、聞いて来た。


「ミホコが売られたって聞いて、助けにきた」


「そんな……そんなこと、できるハズないのに」


ミホコも『人間発注書』のことはよく知っている。


売られた人間が助かった例なんて今まで1度もない。


「俺はできるって信じてる」


そう言うと、ミホコは涙でぬれた目を少し細めて笑った。


「のんびりしてる暇はないぞ」


伸紀にそう言われ、ハッと我に返った。


再会を喜んでいる時間は俺たちにはない。


「動けるか?」


そう聞くと、ミホコは頷いてベッドから出て来た。


「荷物は?」


「なにもない。突然拉致されて、気が付いたらここにいたんだから」
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