人間発注書
「捨てろ! その腕時計を捨てるんだ!」


森の中を走りながら俺はミホコへ向けてそう言った。


ミホコはどうにか腕時計をとろうとバンドに手をかけているが、それはびくともしない。


「どうした、外れないのか?」


「無理だよ、だってこれ……」


ミホコの足が徐々にゆっくりになって行き、やがて止まってしまった。


俺はミホコの腕時計を確認するために足を止めた。


青ざめたミホコが腕時計をつけている左手を差し出してくる。


「マジかよ……」


それは普通の腕時計とは違い、手首にピッタリとハマるように作られたリングだったのだ。


伸縮性もないそれは手首からは絶対に外れないようになっている。


きっと、なにか機械を使って取り外しをするのだろう。


今もまだその腕時計からサイレンが鳴り続けている。
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