人間発注書
「……あたしはいいから、2人は逃げて」


青ざめたまま、ミホコはそう言った。


「何言ってんだよ。ミホコを助けに来たのに、置いて行くわけがないだろ」


俺はハッキリとそう言い切った。


ミホコが微かにほほ笑む。


その目には涙が浮かんでいた。


「ここにいたら、2人まで捕まっちゃうよ」


「それならそれでいい。施設の実態をもう少し探りたいと思ってたところだ」


もしも、瑠菜がここへ送られてくるなら捕まる事でチャンスを掴めるかもしれないんだ。


少し強引な考え方かもしれないけれど、俺はそう考えることにした。


最悪な事態なんて想像できなかった。


「俺も同感」


伸紀が意外にもしっかりとした口調でそう言った。


どっちにしても、このままミホコを置いて帰る選択肢なんて俺たちにはない。
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