人間発注書
「2人とも……」


ミホコの目に涙が滲んだその時だった。


森の中をガサガサと歩き回る音が聞こえて来て、俺は咄嗟にミホコの前に立っていた。


こんな事をしても意味なんてない。


サイレンが鳴っているのだから場所だって簡単に特定されるだろう。


「いたぞ!!」


そんな声が聞こえて来て、黒いスーツを着た男数人が現れた。


緊張で背中に汗が流れて行く。


右手がナイフを忍ばせていたポケットに触れた。


相手は大人数だ。


危害を加えればどんな仕打ちが待っているかわからない。


けれど、簡単にミホコを差し出すつもりもなかった。


男たちが近づいてきたのを見計らい、俺はポケットからナイフを取り出したのだった。
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