人間発注書
☆☆☆

それからすぐに伸紀は男に連れられてどこかへ行ってしまった。


だけど大丈夫。


売り物を雑に扱ったりはしないはずだ。


俺は伸紀の後ろ姿へ向けて「必ず助け出す」と、囁いた。


男に聞こえないように注意を払っていたからとても小さな声だったけれど、きっと伸紀には届いていたはずだ。


それから数十分後、俺は檻のような部屋から出されミホコと2人で施設の外に立っていた。


ミホコの腕にはもうあの腕時計はない。


俺はミホコの手をきつく握りしめて山を下りて行ったのだった。
< 239 / 304 >

この作品をシェア

pagetop