人間発注書
「もういい、あたしが電話に出るから」


ミホコはそう言うと、俺が止める暇もなく電話に出てしまっていた。


電話口から父親の声が漏れて聞こえて来る。


「白鳥です。秋夜なんですけど、今近くにいます。学校のボランティア行事で宿泊してるんですが、秋夜は何も言わずにここに来たらしくて――」


スラスラと嘘を並べるミホコに俺は感心してしまった。


咄嗟にそこまでの設定を思いつく事ができるもんなんだな。


しばらく会話をしていたミホコが「明日、ちゃんと家に連絡するように伝えます」


と言って電話を切った。


「秋夜のお父さん、メチャクチャ心配してたよ! 本当に無鉄砲なんだから!」


「悪い。サンキュな」


両親が心配していることはずっと気になっていた。


着替えた制服は裏庭にこっそり置いてきたし、心配しないワケがなかった。


だけど、ミホコのおかげで俺に気がかりは1つ減ったのだった。
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