人間発注書
「隙だらけだな」


父親がそう言い、車の中を覗き込んだ。


中からタケトの声が聞こえて来る。


その声に母親が飛び起きて車へと向かった。


「伸紀!」


ミホコの声に反応するように、伸紀が車から下りて来た。


その顔は青ざめているが元気そうだ。


「助けに来てくれたんだな」


伸紀が俺を見てそう言った。


「当たり前だろ」


そう言って抱き着きたい衝動をグッと抑え込んだ。


感傷に浸っている暇はない。


「行こう」


俺はそう言い、森の中へと急いだのだった。
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