人間発注書
☆☆☆

久しぶりの学校を見上げると一瞬灰色の施設を思い出してしまった。


ゾクリと背筋が寒くなり、それを振り払うように歩き出す。


教室へ到着する前に高原先生とすれ違ったので、俺はお礼を伝えて置いた。


両親に何も言わなかったのは高原先生のやさしさだと、俺は受け取ったのだ。


「立木君、大丈夫なの?」


高原先生の質問に俺は一瞬戸惑った。


高原先生はどこまで知っているんだろうか。


「俺は……大丈夫です」


自分に言い聞かせるようにそう言った。


俺は間違えたことはしていない。


そう信じているけれど、相手は警察も認めた人身売買の組織だ。


伸紀とタケトを盗まれたのだから、俺は犯罪者と言う事になっているはずだ。


相手がいつまでも俺を野放しにしておくとは思えない。


もしくは、伸紀とタケトを奪い返しに来るかもしれないのだ。
< 272 / 304 >

この作品をシェア

pagetop