人間発注書
☆☆☆

女装をしたのは生まれて初めての経験だった。


中学校の体育祭の時、仮装行列に参加した友人が女装されられたのを見て爆笑した事は今でもよく覚えている。


あんな風にならないように細心の注意を払ってメークをしてもらった。


出来上がった姿を鏡で確認してみると、まぁまぁな女性が映し出された。


「いいよ、綺麗だよ」


「そうか?」


そんな事で褒められてもうれしくはない。


俺は鏡を少女へ帰して、屋敷の廊下を歩き出した。


客室がどこにあるかはもうわかっている。


黒スーツの男たちはまだ屋敷内にいるだろうか?


俺が恐れているのは村山ではなく、黒スーツの連中だった。
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