人間発注書
その言葉を俺は聞きのがさなかった。


優しいふりをして生徒を誘導し、村山に売ろうとしていた女だ。


そう思うと、急激に心が冷たくなっていくのを感じた。


いい先生だと思っていた。


俺たちを守ってくれていると思っていた。


だけど本当はこうなる事を見越していたんだ。


だから、ミホコの事を聞いたときあそこまで詳細を教えてくれたんだ。


俺や伸紀が動き出し、犯罪者になって帰る場所も無くなる事を、全部知っていたんだ。


そう思うと、自然と奥歯を噛みしめていた。


高原先生だって辛かったんだろう。


自分の妹を村山のような男に購入され、苦しかったんだろう。


両親が旅行へ行っていると言うのも、きっと嘘だ。


借金の末に姿を消したのかもしれない。

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