人間発注書
「冗談だろ……」


思わずそう呟いた。


スマホを握りしめている手にジットリと汗が滲んできている。


失業率が過去最悪だということは知っていたけれど、まさかここまでひどいとは思わなかった。


働きたくても働けない人々を助けるために、人身売買を認めると言うのだ。


俺は強い眩暈を覚えて、指先で眉間をキュッと押さえた。


いつからこんなことになったのか、俺は全然気が付かなかった。


日付を確認したところ、今年に入ってから適用されたようだけれど、適用されるまでには沢山の議論があったはずだ。


それなのに、俺は何も知らなかった。


テレビもろくに見ず、新聞なんてここ最近開いてもいない。


そんな自分の生活に今更ながらうんざりしてしまう。


とにかく情報を集めたくて更に読み進めていくと、そのページは《人間発注書》のサイトにリンクがはられていた。
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