人間発注書
トイレ掃除を終えて戻ってくると、次のバイトさんが来ていた。


レジを点検し、引継ぎをして事務所へと足を向ける。


その時新人に引き止められた。


新人も俺と同じ上がり時間だったはずなのに、まだ床掃除をしている。


「今事務所にお客さんが来てるから」


「え、そうなんだ?」


俺はキョトンとしてそう聞いた。


事務所内に入れる客なんてごくわずかだ。


万引き犯を捕まえたんだろうか。


そう思っていると「うちの上得意様が来たんだよ」と、新人が教えてくれた。


「上得意様?」


俺は首を傾げた。


毎日通ってくれてるお客さんは何人もいる。


家が近いとか、職場が近いとか理由は様々だけれど、そんなお客さんが事務所に入ったところなんて、俺は見た事がなかった。
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