人間発注書
「あ、出て来た」


新人の声に視線を向けると、事務所から恰幅のいい男性が1人、店長と共に出て来た。


2人が並んでいたら相撲でも始まってしまいそうに見える。


「あれが上得意様……?」


俺はその男性客を視線だけで見送り、新人に聞いた。


「あぁ。時々顔を覗かせては高額商品を買って帰るんだ。さ、事務所も開いことだし、俺たちも帰ろうぜ」


新人がさっさと掃除道具を片付けて事務所へと入っていく。


俺はすぐにその背中を追いかけた。


「高額商品って言っても、コンビニの商品なんて知れてるじゃん」


俺が言うとカーテンも引かずに着替えを始めた新人が「色々な商品があるんだよ、この店にも」と、返事をした。


それは《人間発注書》のことだろうか?
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