人間発注書
「は? 嘘だろ?」


「嘘じゃねぇよ。見ろよこれ」


そう言って伸紀が鞄から靴を取り出してテーブルの上に置いた。


注意しようかと思ったが、それはまた綺麗な状態のままだったので何も言わずに置いた。


伸紀がブツブツと文句を言いながら箱を開けて俺に中身を見せて来た。


それは確かに俺たちが注文した靴だった。


が、伸紀のものは靴の側面にひどい汚れが付着していたのだ。


「なんだこれ」


黒い汚れの部分を指先でこすってみても、落ちる気配はない。


「Trustってさ、実店舗もあるだろ? そこで展示されていた商品で汚れたものを送られてきたんじゃないかなって思うんだけど」


「冗談だろ?」


俺は驚いて伸紀を見た。
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