人間発注書
それは伸紀の優しさだったかもしれないけれど、俺は素直に受け取ることにした。


「じゃぁな。買い物付き合ってくれてサンキュ」


別れ道に差しかかり、伸紀が手を振って俺に背中を向ける。


俺はその背中をしばらく見送ってから再び歩き出した。


Trustの商品が粗悪なものになってきている。


あのウワサは本当だったんだ。


伸紀の靴を見せられた時、現実を突きつけられたような気分になった。


でも、だからと言ってあの掲示板に書かれていることがすべてというワケじゃないはずだ。


ほとんどがTrustのファンが感謝の気持ちを込めて書きこんでいる掲示板なのだから。


「時々はこういう時もあるよな」


俺は自分に聞かせるようにそう言って、前を向いたのだった。
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