人間発注書
☆☆☆

ひょんなことからあの男性客の名前と家を突き止めた俺は、翌日の日曜日に朝から夕方までバイトに入っていた。


学生である俺が目一杯稼げるのは休日くらいしかない。


今年の夏休みは予定も組まれているから、いつも以上に張り切ってシフトに入っていた。


この日の相方は新人だったため、気がねなく働く事ができる。


「なぁ、この前の上得意様ってさ、あの丘の屋敷に暮らしてる?」


店内からお客さんが減った頃を見計らい、俺はお菓子の品出しをしている新人にそう聞いた。


「あぁ。なんだ秋夜、知り合いかなんかだったのか?」


「いや、知り合いじゃないけど昨日家の近くで見かけたから」


そう言い、新人の隣にしゃがみ込んでお菓子の箱を開けていく。


さっき昼のラッシュが終ったばかりだから、売り場はスカスカだ。


「そうなのか。あの人は確かにあの屋敷に暮らしてるって話を聞いたことがある」


「しかも、いろんな女が出入りしてるって?」
< 54 / 304 >

この作品をシェア

pagetop