人間発注書
時計は12時を少し過ぎたところを指している。


「それだけじゃないんだよ。俺、着ていく服なんか持ってないんだって」


何週間も前からわかっていたなら、そのために服も購入していただろう。


だけど急に決まった話だったから、買い物に行く時間すらない。


「え? 着替えてから行くつもりなの?」


「あぁ。だって、瑠菜の学校は私服だろ?」


「そうだけど……」


ミホコは更に呆れ顔だ。


「私服の方がいいことだってあるだろ。平凡な高校生が瑠菜と一緒に歩いているところなんて、クラスメートに見られたくないだろうし」


「秋夜、いつからそんなネガティブになったの?」


「ミホコだってわかるだろ? 自分と相手が釣り合ってないような気がする時もあるだろ?」


俺がそう言うと、ミホコがなにか思いついたように目を輝かせた。


「そうだ! 服を新人君に借りたらどう?」


「新人に?」


「うん。新人君ならきっとオシャレな服を沢山持ってるよ」
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