人間発注書
☆☆☆

俺と瑠菜は窓際の席に座り、一般市民の生活について話をしていた。


1時間しかないデートでする会話じゃないかもしれないけれど、瑠菜が熱心に聞いてくれるので俺も熱心に話すしかなかった。


本当はこの1時間でもっと距離を縮めて、次のデートの約束なんかもできればいいなと思っていた。


そうはいかなさそうな雰囲気に、少しだけ落胆する。


けれど、こうして瑠菜と2人きりの時間は俺にとって人生最大の幸福でもあった。


「先生にもタメ語というものを使うんですね」


今まで説明した中で瑠菜が感心したようにそう言った。


なんと、瑠菜は『タメ語』という言葉の意味も知らなかった。


俺たちみたいに言葉を簡潔化させて喋る事がないらしい。


「まぁ、それは一部のみね。すごく仲がいい先生とかだと思わずタメ語で話しかけたりして、後から怒られる」
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