人間発注書
「そうなんですか……」


正直どうでもいいような内容でも瑠菜は終始感心しきりだった。


会話は一旦途切れたところでコーヒーを飲み、瑠菜を見た。


瑠菜の手元にあったドーナツはいつの間にかなくなっていて、話を聞きながらもペロリと食べてしまったのがわかった。


それを見てホッと安堵のため息を吐き出した。


瑠菜ならもっと有名で高い店のドーナツをいくらでも食べてきただろうと、少し不安があったのだ。


俺たちが食べているドーナツでもちゃんと口に合ったことが嬉しかった。


「それでさ、ちょっと相談なんだけど……」


次のデートの約束を取り付けるためにモゴモゴと口を動かす。


今までどうでもいい話を散々してきたのに、こういう時に限って緊張してうまく話せない。


俺は自分の頬をパチンと叩いて気合を入れ直した。


その様子を見ていた瑠菜が驚いたように目を丸くする。


「今やったのはなんですか?」
< 85 / 304 >

この作品をシェア

pagetop