人間発注書
「なんだよ、元気ねぇなぁ」


新人はヘラヘラと笑いながらそう言う。


自分が幸せだから、俺の不幸になかなか気が付かないようだ。


「お前は幸せそうでいいな」


「なんだよ、お前もだろ?」


そう言って俺の肩を叩いてくるので、俺は思いっきり新人を睨み付けた。


さすがに新人は一瞬ひるみ、「なんだよ、もしかして上手くいかなかったのか?」


と、今更気が付いた。


人の不幸に鈍感すぎるだろ。


「最低、最悪だよ」


吐き捨てるようにそう言い、床掃除を再開する。


あの日の出来事も、床の汚れみたいにリセットできたらいいのに。


なんて考えながら。
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