恋する天の川



そんなことあるわけがない。
死んだ人間はスマホをいじれないはずだし。

私はブツブツひとり言を言いながら、家を出た。



今日7月7日は、保育士の私にとっては忙しい一日だった。
私の勤める幼稚園は、7月7日に盛大なイベントがあった。
夏の七夕会といって園児のお遊戯や劇を発表する一大イベントだ。

私の受け持つ年中さんのクラスは、七夕にちなんで彦星と織姫の劇をするのがお決まりだった。
皆で大きな紙に天の川を描いて、星の飾りやモールやキラキラとした装飾品で夜の星空を完成させた。
それは舞台の背景となり、彦星と織姫が再会する場面では、舞台の床に移動して星空に浮かんでいる様子を演出しなければならない。


「みんな~、準備はいい?
今日は、お母さんやお父さん達の前で、練習してきた事を発表しましょうね~」



「は~い」


担任の私の優柔不断な性格のために、彦星が6人、織姫は8人もいる。
中には、脇役のロケットや流れ星をしたがる子もいたが、結局はほとんどの子が主役をしたいのは当たり前の事で、私もできるなら希望する役をやらせてあげたかった。

だから、なり手がいない脇役は私の仕事で、とにかく目が回るほど忙しい。


「美緒先生のお母さんも来るの?」


一番やんちゃなたっくんがそう聞いてきた。





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