sweet voice
「そんなことありません!


だって私は、荒井さんの声が・・・」


・・・しまった。


これじゃ、荒井さんが好きだって言ってるようなもんじゃん。


「俺の声が、なんだよ?」


「なんでも、ないです」


「なんでもなくねーだろ」


「忘れてください」


「ふーん」


それ以上、荒井さんは突っこんでこなかった。


ホッとしたような、最後まで言いたかったような。


なんとか急ブレーキをかけて、事故を回避したような気分。


「そろそろ帰るか」


時計を見たら、もう23時を過ぎていた。


「すみません、遅くなってしまって」


「いいよ」


荒井さんが会計を済ませ、お店を出てからお財布から三千円出した。


「これ、私の分です」


「いらねーよ、俺の方が稼いでるし」


「でも、さっきもごちそうしてもらってますし」


「じゃあ、もうちょっとつきあえよ」


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