sweet voice
その日の夜、伸二くんは私の部屋に泊まった。


キスされても、抱かれていても、私の頭の片隅にはいつも、『早く断らなきゃ』という焦りばかりがあった。


焦れば焦るほど、何も考えられなくなる。


他人から見たら、ニューヨークへ行っちゃえばいいじゃん!ぐらいの勢いで簡単に解決できるのかもしれないけど。


海外だから躊躇してるのか、国内ならいいのか。


場所は関係なくて、結婚を意識できないのか。


悩みはどんどん深くなっていき、ズブズブと深くて暗い沼に沈んでいくような感覚だった。


結局、ほとんど一睡もできないまま、朝を迎えた。


「花音さん、起きてる?」


伸二くんの声は、聞こえないフリをした。


「花音さん、一緒にニューヨーク行ってくれるよね?」


頬をなでられてる感触がある。


寝たフリを続けていた私は、そのまま本気で眠ってしまった。


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