sweet voice
「住むマンションも見てきたんだけど、社宅として使ってる社員が多いから、日本人もいるしセキュリティーもしっかりしてたよ」


伸二くんは、スマホで撮った写真を見ながら、ひとつひとつ丁寧に説明してくれた。


「そうだ、今度両親に会ってくれないかな?」


「えっ?」


「もちろん、花音さんが僕と結婚するって決めてくれてからでいいけど」


伸二くんは、来年の3月にニューヨークへ行くことが決まっている。


早く返事をしなきゃいけないって、頭ではわかっているんだけど。


決断するには、何かが足りないんだ。


「ごめんね、まだ決められなくて」


「いいよ、ゆっくりで。


花音さんはいい返事してくれるって、信じてるから。


あっ、そろそろランチ行こっか」


ご両親のこととか、手続きのこととか、伸二くんの話を聞きながらランチした。


昨日までの日々とはあまりにもかけ離れた話で、ランチを楽しむ余裕はなかった。


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