sweet voice
「良かったです、嫌われたのかと思っていたので」


「別に、おまえを嫌う理由なんてないだろ」


「そうですけど、電話でもそっけなかったですし」


「悪い、忙しかったんだよ」


「心配して損しました」


「なんの心配だよ?」


「いえ、別に」


「例の年下彼氏とはどうなった?」


「円満にお別れしました」


「そっか」


気のせいか、荒井さんの頬がゆるんだみたいだった。


「そういえば、前に俺の声がどうとか言ってたよな?


あれって、どういう意味?」


「意味って言われても・・・」


ここで本当のことを伝えたら、困らせるだけのような気がした。


もうすぐ離れることがわかっている相手と、つきあいたい人はあまりいない気がする。


でも、気持ちを伝えるチャンスは、もうないかもしれない。


< 149 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop