sweet voice
別れてから、何度かメールのやりとりはした。


内容は近況報告とか夕飯なに食べた?とか、なんでもないことばかりだったけど。


別れてから会うのは、今日が初めてだ。


元カレの男友達と、ごはん行くだけ。


私は、自分に言い聞かせるように、荒井さんへの後ろめたさを打ち消した。


「うんいいよ、どこにする?」


「行ってみたい店があるんだ」


伸二くんは、一瞬私の手をとって、案内しようとした。


すごく冷たい手だったのと、まさか手をつなぐと思ってなくて、反射的に手を抜いてしまった。


「あっごめん、思わずつないじゃった」


「もう、子どもじゃないんだから、迷子になんかならないよ」


「そうだよね、こっち」


伸二くんと微妙な距離で歩きながら、私は気づいてしまった。


伸二くんはたぶん、私をずっと待っていてくれてたんだ。


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