sweet voice
「さてと、俺もビール頼むかな」


二人でビールを注文し、乾杯した。


数ヵ月ぶりに二人っきりになったから、なんか照れてしまう。


「花音。


俺たち、もう一度やりなおそう」


荒井さんの渋い声が、私たちの間の緊張感をほぐしてくれた。


「うん」


「花音はすぐに大阪へ来なくてもいいけど、浮気したら今度は許さねーからな」


「はい」


それから、大阪の話や仕事の話が続き、一段落した時。


「そういえば、彰太が言ってたんだけど、小さい頃のことってなに?」


私が聞いたら、荒井さんは一瞬困った顔をした。


「花音は、覚えてねーのかもな」


そして、懐かしいことを思い出すような、やわらかな顔をして、私に『事情』を話してくれたんだ。


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