sweet voice
それに、そういうゴタゴタを片づけたとしても。


私には、荒井さんに聞きたくても聞けないことがあった。


例の、新幹線改札口で見かけた美人のことだ。


私が伸二くんとやらかしたことを棚にあげて、荒井さんのことを聞き出すなんてできない。


でも、もしも大阪へ行くことになるとしても。


あの美人との関係を聞かないまま、荒井さんとつきあっていくことはできない気がした。


荒井さんは、すぐに大阪へ来なくてもいいって言うけど。


その言葉に甘えて、曖昧な関係のまま遠距離になって、別れるのがいいんじゃないかとさえ思っていた。


「今度こそ、荒井さんの手を離しちゃダメだからね」


茜に念を押され、しぶしぶうなずいた。


先日、実家の父に確認したら、荒井さんのお父さんから話があったらしく、


「拓海くんなら何の問題もないじゃないか。


花音でいいんですか?って感じだぞ」


娘をもつ父親とは思えないセリフを言った。


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