sweet voice
3月末の、荒井さんが大阪へ行く日を意識したまま毎日を過ごしていた。


あと2週間、あと10日・・・


荒井さんは忙しいらしく、電話するくらいで会ってはいなかった。


そんなある日、会社帰りに最寄り駅でボーッと立っていたら、肩をポンポンって軽く叩かれた。


ゆっくり振り返ったら、ニコニコしてる伸二くんがいた。


「ひさしぶり」


「どうしたの、伸二くん?」


「ニューヨークへ発つ前に、花音さんの顔がどうしても見たくて、待ってたんだ。


事前に連絡しても、会ってくれないって思ったから」


「そっか、いよいよだね。


体に気をつけて、がんばってね」


「ちょっとお茶しない?


なにもしないからさ」


「なにもしないって、当たり前でしょ」


「簡単には会えなくなる友達と、お茶するくらい許されるでしょ」


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