sweet voice
「・・・あと、荒井さんに聞くに聞けないことがあるから」


荒井さんの隣にいた美人のことを、伸二くんに話した。


伸二くんになら、簡単に話せるのに。


「どうして聞けないの?」


「だって、そんなこと聞ける立場じゃないし」


「じゃあ、本当のこと知らないまま、離れちゃっていいわけ?」


「いいよもう」


「でもさ、駅で二人の姿をみかけたあとに荒井さんから『やり直そう』って言われたのに、なんで確認しないままオッケーしたの?」


「だって・・・嬉しかったから」


「それが、花音さんの本音なんじゃないの?


自分の気持ちに、まっすぐ向き合っていけばいいだけだと思うけどな」


伸二くんの言う通りなんだと思う。


荒井さんに素直に甘えられたら、どんなに楽だろう。


でも、どこかでブレーキを踏んでしまう自分がいて、どうしようもなかったんだ。


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