sweet voice
気づいた時には、パソコンを閉じ、部長の前まで歩いていた。


「部長、体調不良なので帰ります」


「大丈夫か、っておい、藤原?」


部長の声を背中で受けながら、私はバッグとコートをつかんだまま、品川駅まで猛ダッシュした。


運よく、信号も青だった。


入場券を買い、新幹線改札口から入り、電光掲示板を確認した。


間に合った、と安心したとたん、荒井さんが何号車に乗るのかがわからないことに気づいた。


右にも左にも、階段がある。


どうしよう。


早くしないと、発車して会えなくなってしまう。


左に賭けよう。


階段をかけあがると、金曜日だからかホームにはたくさんの人がいた。


荒井さん、どこにいるの?


キョロキョロしていたら、隣の車両近くに背の高い後ろ姿を見つけた。


< 198 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop