sweet voice
どんどん小さくなっていく拓海は、私にずっと手を振っていた。


我慢していた涙が、あふれて止まらなくなった。


その涙の量はたぶん、拓海を好きな気持ちと比例してるのかな。


東京に着くまで、拓海とメッセージのやり取りを繰り返して、さみしさを紛らわした。




「ふーん、なんかさ、予想通りでつまんないなー」


「ちょっと、その言い方ひどくない?」


「一度きりの人生だし、ニューヨークを選んでほしかったのになー」


「なら、茜が行けばいいじゃん」


「ごめんごめん冗談だって、好きな人を選ぶのが一番だよ」


名古屋に発つ前日、茜と二人で飲んでいた。


拓海と会わなかった今年の年明け、拓海は大阪へ行く準備をしてて、私は名古屋へ行く準備をしてた。


目的地は違っても、同じ方向へ、同じようなことをしてたんだと思うと、少しおかしかった。


< 210 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop