sweet voice
そして、本来は東京へ戻れるはずだったゴールデンウィーク。


私は、名古屋支店勤務が5月末まで延期になり、それを伝えるために拓海のいる大阪へ向かった。


新大阪駅に着くと、拓海はまだ待ち合わせ場所に来ていなかった。


まわりの人はみんな、連休中で楽しそうなのに。


私は、大好きな人に、まだ一緒に暮らせないって告げないといけないなんて。


「悪い、待たせちゃったな」


愛しい声に顔をあげると、拓海は私をまっすぐ見ていた。


「ううん、平気」


「じゃ、メシ食ってから帰るか」


さりげなく、私の荷物を持ってくれる。


こんなに、近くにいるのに。


遠ざけることを言わないといけないなんて。


荷物をロッカーに預け、拓海おすすめの串カツ屋さんに行った。

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