sweet voice
別の仕事。


そんなこと、考えたこともなかった。


大学卒業してから今の会社に就職して、何の不満もなく過ごしてきたけど。


大阪へ行くきっかけをつかめないのは、そんな風にぬるま湯につかっている生活を続けていたからかもしれない。


もちろん、仕事は真面目にやってきたし、やりがいも感じてたけど。


知らない街で、やったことのない仕事に挑戦しようなんて、思ったことなかった。


「ま、俺のとこに永久就職するってのも、ありだぞ」


「いやー、それはない」


「おい、ないってどういう意味だよ?」


「あれ、もしかして焦ってる?」


「うるせー、焦ってなんかねーよ」


「焦ってないなら、もう少し名古屋か東京で頑張ろうかな」


「・・・マジかよ」


本気でさみしそうな横顔を見たら、少しかわいそうになってきた。


< 214 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop