sweet voice
「さっき、ビールを一気飲みしてたから」


見られてたのか。


よりによって、この場で一番見られたくない人に。


「すみません、その、飲まず食わずで裏方やっていたものですから」


「イメージと違うね、藤原さん」


「えっ?」


もしかして、名前を覚えててくれたとか?


「電話だと、もう少しおとなしい人なのかと思ったから」


あーもう、この場から逃げ出したい。


「本当に申し訳ありません、忘れてください」


「いやー、ビールの飲みっぷりといい、彼との関係といい、ちょっと忘れられないな」


もう、何も言い返せない。


「こちら、資料になります。


懇談会が始まっておりますので、こちらからお入りください」


「わかりました、それではまた」


< 26 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop