sweet voice
資料を手渡した時、いつもの癖で左手薬指をチェックしてしまった。


よし、結婚指輪なし。


いやいや、結婚してなかったとしても、最悪な出会いだから。


後ろ姿を呆然と見送りながら、だんだん頭が冷静になってきた。


私の名前を覚えてたんじゃなくて、ネームプレートを見て電話の件を思い出しただけ。


しかも、電話での最悪な第一印象だけじゃなくて、ビールの一気飲みや彰太とのやりとりを見られてるし。


あーもう、ついてないな。


荒井さんとどうにかなるとかつきあうとか以前に、飲み友達にもなれそうにない。


彰太におごってもらって、愚痴るしかないな。


それにしても、彰太の話したいことってなんだろう。


さっぱり見当もつかない。


一気飲みしたビールが着火材になったみたいで、体がビールを欲してる。


< 27 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop